プーチン大統領の大改革 vol.2

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photo credit:Putin vs Obama via photopin (license)

 

前回の記事ではプーチン大統領の1期目(2000年-2004年)に関して書いた。

今回は2期目(2004年-2008年)に焦点を当てたい。

2004年3月14日、プーチンは大統領選挙に臨み、71%を獲得し圧勝。2期目の大統領職に就くこととなる。1期目(2000年-2004年)では主に、中央集権化体制の強化、財閥の排除、減税による経済改革という3つの事を行った。これらの結果として経済発展を実現させる。(また、前回の記事では述べていなかったが、経済発展を促した要因としては原油高も大きく影響している)

2期目を見ていく前に前提として、米ソは新たな冷戦状態に入ったことを伝えたい。遡ること2003年、「ユコス事件」が起こり米ソは新冷戦状態に入った。ユコス事件とは、当時ロシアの石油最大手ユコス社のCEOホドルコフスキーが2003年10月に脱税などの容疑で逮捕された事件のことだ。ホドルコフスキーはアメリカの利益を代弁しているとし、アメリカの影響を排除しロシアの国益を最優先させたいプーチンはホドルコフスキーを逮捕した。このことでアメリカとの関係が一気に悪化し、冷戦状態に入った。

 

プーチン大統領の大改革 

さて、2期目にプーチンが行ったことは「中国との同盟」、「NGO規制法を制定」、「ドル体制を崩壊させ、自立を目指した」、という3点に集約される。

①中国との同盟

2005年には中国との関係を強化していく。ロシア一国ではアメリカと戦えないという理由で、同じ目的を持つ中国と協力することになる。

まず、40年にも及んだ北方領土問題を2005年の6月に解決している。さらに8月には合同軍事演習を行い、翌年2006年にはプーチンは北京を訪問し、胡錦濤主席と会談し原油を巡る問題で協力することになる。この中ロ同盟の要ともなっているのが上海協力機構(SVO )だ。2001年に上海にて創設され、現在では中国、ロシア、カザフスタン、キルギス、タジスキスタン、ウズベキスタン、インド、パキスタンの8カ国で構成され、反米の砦とされている。プーチンはNATOに対抗するためこのSCOを強化していった。

②NGO規制法を制定

同じ時期、ロシア周辺国ではアメリカ画策の「カラー革命」が起きていた。カラー革命とはアメリカの資金援助によって(と本書では考察している)起こされたグルジアのバラ革命、ウクライナのオレンジ革命、キルギスのチューリップ革命などの革命である。これらを総称して「カラー革命」と言っている。ロシアはこの革命を自国で起こさせないために、また外国からの政治活動資金流入やNGOの目的外活動を規制することを目的に2006年初め、この「NGO規制法」を制定したのだ。

③ドル体制を崩壊させ、自立を目指す

2006年ロシア中央銀行は「外貨準備に占めるドルの割合をこれまでの70%から50%に下げる」と発表し、翌年2007年にはプーチンはロシアルーブルをドルに替わる世界通貨にすると宣言し、その意向を示した。証券取引所の一つで初のルーブル建てロシア原油の先物取引を開始するなど具体的に行動していった。この流れに乗るように2007年にイランは原油のドル決済を中止するなど、他国でもドル離れの影響は広がっていった。

以上が、2期目に本書でいうところのプーチンが行ったことである。経済成長はと言うと、やはり原油高の影響も大きいが、実質GDP成長率で年68%台の成長(2004 – 2007年)という結果を残した。また、GDPも2000年には2511億ドルだったものが2007年には1兆2237億ドルと約5倍となった。

 

アメリカはどうだったか

合わせてアメリカ側の視点からも見てみたい。

1945年〜1991年の世界は「米ソ冷戦時代」「米ソ二極時代」だった。そして冷戦後、アメリカはITバブルに沸き、旧ソ連は崩壊(1991年)、15個の独立国家に分裂。ライバルであった日本はバブル崩壊、欧州ではソ連から解放された貧しい東欧を吸収して苦しい状態でもあった。つまり、他国は経済状況は良くなく、アメリカのみがいいという「アメリカ一極世界」であった。

このアメリカ一極世界は大きく前半と後半に分けてみることができる。

《前半》

ビル・クリントン時代 (1993年1月-2001年1月)

「ITバブルに酔いしれ、好景気に沸いていた時代」

《後半》

ジョージ・W・ブッシュ時代 (2001年1月-2009年1月)

「全てが暗転。ブッシュが一極体制を守ろうと戦い、それに失敗した時代」

「一極主義vs多極主義(ロシア、中国)の時代」

  • ユーロの誕生(1999年、クリントン時代)
  • 原油の決済通貨がドルからユーロへ変わる(2000年11月)
  • 9 .11同時多発テロ(2001年)
  • アフガン戦争(2001年)
  • イラク戦争(2003年)
  • 米ロ新冷戦(2003年〜)
  • グルジア戦争(2008年)

そして、2008年9月にリーマンショックが起き、アメリカ一極世界は終焉を迎えた。その後、同年11月に現オバマ大統領が選挙に勝ち、バラク・オバマ政権(2009年1月-現在)が誕生する。ここまでがアメリカ側から見た2008年あたりまでの流れである。

 

次回はプーチン大統領の現在に至るまでを最後に見ていきたい。

 

▼1つ目の記事はこちらから

プーチン大統領の大改革 vol.1

▼次の記事

プーチン大統領の大改革 VOL.3

 

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